UCI Gran Fond World Championships 2016 age19-35 インサイドレポート
UCI Gran Fond World Championships
(Photo by HASHIMOTO)
UCI(世界自転車競技連盟)主催するアマチュア世界選手権、多くの人にチャンスがあるよう年代が細分化されている。
(Photo by GFWC Perth)
今回の出場者の予選大会比率、Nisekoからの参加者は全体の3%
世界選手権のキップを得た大会レポートはこちら↓
http://assalitore.hatenablog.com/entries/2016/07/13
今回の世界選手権で私のクラス19-35歳
・メンバー
日本人はラバネロ加藤君、早稲田OB井上君、ハシケンさんの4名。
・コース図
50km平坦、50kmの周回コースを2周する155km。
平坦は高速道路を完全閉鎖。
周回コースは「ZIGZAGヒル」というZ字のつづらおり坂を越えてゴールの「Kalamunda(カルマンダ)」につく。
その後25kmで2個の長め登りと、25kmアップダウンが続きZigzagに戻る。
獲得標高2400m
コーナーは少なく流れるのでパワーがいるコース。
・作戦
50kmまでハイウェイを完全閉鎖した平坦路だ。7人以上の逃げが出来たら平坦とはいえ逃げ切る可能性が出てくるジャパンも誰か乗って欲しい。
50km以降は周回コース。ゴール地点 Kalamunda(カルマンダ)へ続く激坂Zigzag hillが勝負どころ。スイッチバック的な狭いジグザグの登りだ。
カーブで集団が詰まりほぼストップ&ゴーを求められる、計4回。
最終周回、このZIGZAGヒルがゴール前4km。勝負所はこことなる。
ここまで耐える走りで爆発したい。
その逆算すれば、平坦で7人以上逃げは許さず、周回1周目も同様、最終周回ZIGZAGまでは決して無駄足を使わず迎えたい。
数を揃えるオーストラリア&イギリス以外チームプレイは難しい人数構成で、実力を選手たちが把握していなので小さい動きは無視する。
・体調
渡豪前は蕁麻疹でインカレを見に行くことも出来ないほど悪化。
ドーピングを気にして「ザイザル」というい薬しか飲めず。
またオーストラリアにきて、乾燥と寒さに肌の状態が悪化する。
お世辞にも肌状態は良いとは言えず、状況は悪いがやるっきゃない。
会社もありがたいことに壮行会をして送り出して貰えたのだから。
・レースレポート
スタート7時なので4時半起床で消灯
起きたら5時、うーんこの・・・・。
急いでチェックアウト準備を進める。
・朝食
山もりシリアル2杯
バナナ2本
水500ml
・補給食
Savas ピットインエネルギージェル×3
井村屋 スポーツ羊羹×3
明治 パーフェクトプラス 即効元気 ×1
20km毎に定点的に食べる。前半羊羹、中盤速攻元気、終盤ジェルという計画。
準備を終え、会場のELIZABETH QUAYへ。10分もかからずつくのがありがたい。
着き次第、TTで使ってゼッケンを1枚失ってしまったので、主催者に相談。
カメラ判定右側だから、そちらにつければよいよとのことで付け直す。
そうこうするとすぐにスタート時間。オーストラリアの英雄マキュアンが目の前を通り過ぎていった。
スタートが切られる。一番早いクラスなのでスタートも一番早い。人数はそんなに多くないのだが。(45ageクラスとか人数倍!)
スタートしてすぐ完全閉鎖されたハイウェイに入る。早速、スタートアタックが断続的に続く、数を揃えるオーストラリア・イギリスが人を替えアタックを繰り返す。
アップダウンもないに等しい4車線の高速道路、集団が圧倒的有利
(Photo by GFWC Perth)
無駄足を使わないようするのみ。車線にあるキャットアイのみ注意(日本のより小さい)
集団の中は楽チンだが周りの選手が大きすぎて前が見えない。平均身長180cm overのプロトンである。
ただ集団の中だと体が冷えるので一回軽くアタックに乗ってみようと前に上がる、道幅もあって上がりやすい。
陸橋の軽い登りでアタックに反応、軽く集団を離すが少しして吸収。そのタイミングで大柄なフランス人を筆頭に3名ほど頑張って再度逃げる。
吸収されたがまだ集団の先頭付近、イギリス人が追走しようとしているのでその人の後ろにつく。
集団先頭2番手なのでローテを促されたら回ろうと待っていると、イギリス人全引きで3人吸収。流石紳士。
頑張って逃げていたフランス人がイギリス人に何か怒鳴っている。イギリス人聞いているように首を傾けるが完全に無視。
100年戦争勃発か?
道路閉鎖されたハイウェイを抜け、逃げは決まらず州道へ
直角コーナーが繰り返されるが立ち上がりは異様に早く、フルもがき。そこそこきつい。大柄な選手たちがガンガンあげていく。
ゴール地点 Kalamunda(カルマンダ)に至る初めの登りへ。集団が活性化し登り前のロータリーで順路でないショートカット続出。
オランダ人がショートカットするな!とならず者たちに怒る。
自分も紳士的に順路で回ると登り口で手段後方、これはよくないとポジションをあげる。
アタックがかかるが集団のペースは早い、その勢いでZigzagヒルに入る。先頭でベルギー人を筆頭に3人がアタックしているのが見える。
入ると道幅が狭くなり渋滞、カーブ、ふるもがき、渋滞、カーブ、ふるもがき、渋滞、カーブ、ふるもがき、渋滞、カーブ、ふるもがき
上記の回数もがいた。中切れの嵐一人ブリッジして先頭集団に追いつくと既に50人ほどに絞られていた。
平坦で前が見えないほどいた大柄な選手たちがほぼ全滅、細身の高身長だけ残っている。日本チームはハシケンさん、井上君。
そしてゴールのKalamunda(カルマンダ)を通りまたアップダウン区間へ突入。
(Photo by GFWC Perth)
まず洗礼を受けたのは・・・・下りが速い!踏まないと離される。GOKISOなのだが。
下りで南アフリカの選手が中切れする、さっき怒ったオランダ人がまた怒る。怒れるオランダ人と自分の中で命名。
そのまま登り返しに。さあどんなペースだと身構え追いつきざまに前に上がる。
登りはむしろペースが抑えられ勾配がきつくなればなるほど快適なペースである、気を抜くと前に出過ぎるのでそこは最後に向け温存する。
むしろきついのは緩斜面、ペースも静かに上がっていき、最終的に異様に踏まされる。
登りは余裕あるねとハシケンさんと話して井上君「きついです!」
たしかに楽観視出来るほどではなく地味に踏まされ続け辛い。アマチュアとはいえ、世界の難易度の高いグランフォンドで上位に入ってきた人らしかいないのだからレベル高い(ペースも早い)。
80km地点のアップダウン区間でクリテリウム的な直角コーナー区間にはいる。何回かのカーブで集団後方接触落車発生。ハシケンさんが巻き込まれる。
当たりそうなのを回避して少し遅れた、心配だが止まるわけにもいかずふるもがきで前に追いつく。今日最初で最後に見た落車だった。
残るは井上君と自分のみ。
100km地点、2周目に入ったところでZigzagヒルへ続く登りで辛そうにしていた井上君脱落。
ZIGZAGに入ると今度はアタックもなく一列棒状の高速ペース。怒れるオランダ人、小柄なスウェーデン人に挟まれ登り切る。
集団は30人ほどに絞られた。地味辛さは変わらないがまだ余裕があり、最終周の勝負が楽しみになってくる。
ゴールのKalamunda(カルマンダ)は盛りあっている。
(Photo by GFWC Perth)
下りに入るとage50以上か?ピンクのゼッケン集団に追いついてしまう。(我々は白ゼッケン)フランス人かの選手が下りだけ集団に混ざり、ついてくるのが怖い。
登りでいなくなって淡々と走っていく。
2回目の登りに入る。勾配がきついところはきつくない。
130km地点、左折し緩斜面に入ると地味にきついが、本当にきついに替わってくる。少数の選手が長く引いているがそれですら辛く感じる。緩斜面でいっきに足が重くなってくる。
なんだこれは、ペースは安定して早いが今まで余裕を持ててついていけてたじゃないか。
残っていた補給食を急いで流し込む、20kmごとの補給はミスなくこなしている。水はダブルボトルにまだ残っている、気温10℃前後だしそこまで汗はかいていない。
しかし脚が重たい。
心肺はあまり上がってないことに気付く。オーストラリアまできたのだぞ!と思いながらもずるずる後退し集団から千切れる。
踏めなくなり、後ろから数人に抜かれていく。
最後の補給で公式サプライヤーであるエティクス(オメガファルマ社のスポーツ用のサプリメントブランド)からボトルを貰いこの順位は維持しようと走るが力が入らずどんどん抜かれていく。
最後のzigzagヒルを登るがもうほんと止まりそうな速度でしか登れず、苦しみながらゴール。
観客たちに盛大な拍手を浴びながらゴール。実況も日本人が帰ってきたことを大げさにまくし立てている。
日本人では一番早く出発し、一番早く帰ってきたので他の人らをまつまでぶっ倒れていた。
(Photo by NAGATSUMA)
続々とゴールしてきた日本人全員が集まり記念撮影
来年はナショナルジャージ揃えて出たいね。
そしてカルマンダより自走で帰路へ。
ZIGZAGヒルを下るが美しい!走っている最中はこんなきれいな場所を走っているとは思わなんだ。
(Photo by INOUE)
帰路途中、現地のオーストラリアンライダーに捕まり一緒に帰ることに。
この方、古いクロモリに乗られヘッドキャップの老紳士、教授といった風貌でパースまでサイクリングロードをつないで気持ちよく連れて帰ってくれた。Thank you!
(Photo by INOUE)
しかし、帰り途中へとへとで眠い。井上君からパワージェルを奪い取り何とか帰れた。
そして着替えて夜はイタリアン!仲良くなった皆さんとおいしいイタリアンとレースやオーストラリアの総括をして大円満。ありがとうございました。
(Photo by NAGATSUMA)
21時ごろパース空港に降り立ち、無事レンタカーも返しおえる。
Holden Commodore Estate いい車だったよ!(自転車3台大型輪行バック3つはいる内装)
パース空港は無料シャワールームがあるのも嬉しい。
飛行機ディレイで24時発が3時発になり日本につくのが22時ごろとなった。
25時間の空港・飛行機内高速はめちゃくちゃきつかったけどいい旅だった。
ありがとう、加藤君、井上君。そしてかかわった皆々様。
オーストラリアパースは美しくて人の優しい素晴らしい町でした。
さぁ、来年の世界選手権はフランスだ!
・レースの反省点(長文注意)
長野県開田合宿まではり準備して挑んだ世界選手権、追い込み過ぎて後半蕁麻疹など体を崩したが、社会人でフルタイムワーカーな自分が決して世界に通用しないわけではないとちょっとした自信もついた大会だった。
そおれだけに後半に入り視界が白くかすみ、足に力が入らず、眠気に襲われたもんだいを解決しなくては、もっと上のレベルに到達出来ない。
そこで、その原因を究明してみる。関心ある方だけどーぞ。(再度長文注意)
・可能性として考えられるのは以下の症状。
①閃輝暗点→脳の視覚野の血管が収縮したり痙攣
②貧血(低血圧)血圧64-120だと低い→ヘモグロビンの値は、男性で14~18g/dl 数値未満は少ない
10.5~13.5mg/日の摂取が推奨)
•鉄分は食品によって吸収率が異なるので、吸収性のよい動物性食品から補給する。
•赤血球の合成を助けるタンパク質、ビタミンB6・B12、葉酸、セレンなどを補給する。
•赤血球膜の過酸化予防として、ビタミンC・E、ポリフェノールなどの抗酸化剤を補給する。
③低血糖→瞳孔散大→回復ブドウ糖を15分置きに10gずつ摂取(レース前に餅やおこわ等もち米を使用した持続性のある炭水化物を摂取)
④過酸素状態→過喚起症候群と同様に、紙袋に息を吐きその吐いた息を吸うことで血中酸素濃度は低下
⑤脳神経関連
こちらは勉強不足。
【対策】
・耐低糖トレーニング
筑波大の鍋倉 賢治先生が更に効率良く、安全なトレーニングとして”全力走+ジョグ”という方法も紹介しています。
これを自転車に当てはめると
寝起きに何も口に入れず、練習を行い最初から全力に近いペースで4kmを走り、グリコーゲンを枯渇に近くします。その後間髪を入れずにペース走に移行し、”低血糖走行”とします。食事後でもある程度の低血糖状態は作り出せるので、より行い易い練習方法です。
注意点としては、走っている途中で急に低血糖でエネルギー切れを起こす危険があるので、補給食(アメ玉一つでも)と小銭を持っておきましょう
ちなみに、「エネルギー切れ」と「ハンガーノック」と「空腹感」は違うもので混同せずに考えなければいけない。
1、エネルギー切れ
本当にエネルギー(脳が必要とする糖)が切れて血糖値が下がり、頭がボーっとしてきて、 最悪の場合は意識障害をおこす。
2、ハンガーノック
エネルギーが減ってきてある程度血糖値が下がってくると、脳の防御反応として(これ以上 の糖の消費を抑える為)運動の停止命令が出て、脚の筋肉が固まった様に動かなくなる。
3、空腹感
a、ある程度エネルギーが減って血糖値が下がり感じる本当の空腹感
b、筋疲労や呼吸の苦しさなどの不快感から転じて感じるニセ物の空腹感
鍋倉 賢治先生はマラソンの指導者であらせられるが、従来の30~40km走といった”オーバーディスタンス”のトレーニングが時間的制限でできない市民ランナーに対し、最大限のトレーニング効果を期待できる方法として行き着いたのが”低血糖ラン”だったそうです。
方法は、起床後(長時間の欠食後)に水だけ飲んで空腹のまま走ります。20~30km走が40km走に匹敵する程のキツさだそうです。
効果は、体にエネルギーとなる糖質(グリコーゲン)が少なく、脂肪を使って走るしかなく、フルの後半のツラさを疑似体験できると共に脂肪をエネルギーとして使うトレーニングにもなります。脂肪を上手く使えれば、グリコーゲンを節約できて・・枯渇によるペースダウン(30kmの壁の一因)を防ぐことができます。(但し、筋疲労によるモノには対応していない)
この練習をあてはめれば低血糖トレーニングでレース後半を意識した練習ができるか試してみたい。(試してみたことがある方の意見も聞いてみたい。)